さて本書は、公務員制度改革を題材に、安倍自民党政権から鳩山民主党政権までの戦いと、そこでの官僚側が仕掛けてきたことを取り扱い、
- なぜ公務員制度改革が必要なのか
- 制度改革として何をすることが必須事項なのか
- 改革を実施するための戦略は何か
外部から政府内に送り込まれた専門家として私は、霞ヶ関官僚の専門性の低さ、あるいは、広範な知識集約作業の遅さと下手さを、6年間にわたって毎日見続けてきた。もちろん、優秀な人材も沢山いる。しかし、業務管理の下手さと、政治家の放置プレー、さらには、独特のキャリア制度のおかげで、人材も腐ってきてしまうことも沢山ある。その悲惨さを目の当たりにして、こんなに人材を大切にしない組織は無いなあって思ったほどだ。また、チームプレーという面では、官僚はとてつもなく下手だ。こんな役所の状況を、手直しして機能するオフィスにすることも「公務員制度改革」には含まれなければならない。
この観点から考えると、現在提案されている公務員制度改革では、天下りと渡りの禁止だけを大目標にしてしまい、多少ボロい提案だと思う。天下り関連意外に深刻な問題なのは、行政スタッフの能力向上をどうするのかということだ。政府は過去と比較して日々複雑さを増す事項を取り扱うようになっている。そのためには、単に東大法学部を卒業したキャリア行政官だけではなく、官民からかき集めた多彩な専門性を持ったチームを形成し、全力で問題を解決していくことが必要なのだ。そのための公務員制度改革と考えることが、今求められることだと思う。
著者の原さんは、霞ヶ関の機能低下問題も指摘はしているが、官民人材交流以上の具体的な処方箋を提示していないことは多少残念に思った。リボルビングドアをどう作っていくか等、考えることは沢山あるように思う。原さんには、より広い意味での「機能する霞ヶ関」への処方箋も提示して欲しかったと思うのは、ちょっと贅沢だったかしら(笑)
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