本書は、大暴落が起きるメカニズムを分かりやすく、かつ体系的に解説する。そして、この雪崩を引き起こしてしまった状況が、商業銀行と投資銀行の垣根が無かったことや、コールレートの制御をFRBが持っていなかったこと、さらには、投資規制が適切に行われてなかったことを明らかにする。1929年以降に、これらのメカニズムは改善されたことも述べている。また、金本位制を引いたドルのために、本当は市場に資金供給が潤沢になされなければならなかった時に、ドルが大量に国外に流出したために、逆に資金供給を引き締めなければならなかったこともメカニズムの不備として述べている。これは、その後の管理通貨制度への道を開いたのだった。
ガルブレイズの述べる言葉は大変意味深い。
- 本当に実態が悪くなっている時に人は、「状況は基本的に健全である」という言葉を口にする。
- 人は確信がもてないときほど独断的になりやすい。
- 何かをするためでなく、何もしないために開く集まりがある。
- 人間は知っていることばかりを話すのでもなければ、知らないことばかり話すのでもなく、知っているつもりだが、実は知らないことを話すことが多い。
さて、浜矩子先生の「グローバル恐慌 - 金融暴走時代の果てに 」は、ガルブレイズの「大暴落1929」を読破してから読むと、さらに理解が深まる良い本だ。
2008年リーマンショックは、世界中の金融市場と金融機関を巻き込んで、100年に一度の最悪の状況を生み出している。これを世界同時金融危機と呼ぶことが多いが、浜は、これこそがグローバル恐慌そのものであると主張する。
本書では、この恐慌が1971年のニクソンショックにまで原因が遡ることができること、米国のインフラ頼みの成長政策と金融規制緩和が原因にあること、さらには、バブル崩壊からの日本円のゼロ金利政策が今回の恐慌の大きな原因であることを述べる。債権の証券化は、単に世界中にリスクをばらまく手法であったと、バッサリ切り捨てる。2009年当初の状況を踏まえ、この恐慌がどうなるのかを見てるのが本書である。さらに、日本円は、いまやグローバル経済の「隠れ基軸通貨」になっていることも述べる。
本書を読了してショックなのは、この恐慌から世界経済が復活するには10年掛かると述べている。日本は、既に「失われた10年」を体験し、そのままグローバル恐慌からの復帰10年、つまり合計で20年不況を経験することになるという話だ。覚悟はしているが、やはり気分は凹むなぁ。
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