2011年1月2日日曜日

書評:日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか / 竹田恒泰

空港の書店で、何気なく手に取った新書。著者の竹田は、積極的な日本って凄い!論を展開する。海外から見た日本はとても人気がある。そして、日本国 内では自虐的な自国イメージが蔓延している。本当は、日本はその凄さがあり、その良さを大切に育てれば、日本はまだまだ世界で頑張って行ける。それは、既 存の経済優先価値感ではなく、日本が育んできた自然との共生、他者に対する思いやり、そのような持続性社会と平和を希求する価値感を持った日本である。そ の日本の中心には天皇が存在し、その存在を正しく社会が理解することこそ大切であると主張する。
日本は、世界中で好かれているし、そのための努力をしてきた人々の長年の苦労と成果によって現在の地位が保たれている。さらに、文化的にも日本は "cool" なものを沢山生み出してきた。しかし、その価値感がを維持したまま、グローバル化する経済社会と付き合い、同時に、我が国に生きる人々を安寧に過ごせるようにしていくのか。これは、単に文化論、社会論だけではどうにもならない。もう少し、世界に向かって、日本はどう生きていくかを考えることが沢山あるだろうと思う。
著者の竹田は「自国の神話を教えていない国は100年以内に滅びる」という言葉を、何度か本書の中で紹介する。日本は、第二次世界大戦後75年を経ている。もうあと25年以内に滅びる運命なのだろう。しかし、そこまで日本人はアホではないと思う。
日本をどのように生存させるかを考える議論において、一つのパズルピースを構成する話題を提供している本だ。一つの extreme として読むのも楽しい。ただ、これだけではない、数多くの価値感と世界観とシステムと日本は取り組んでいかなければならない。その意味で、視野を広げる道具としての価値を、本書には見いだせると思う。
ちなみに、経済が上手くいかず、国内に閉塞感が高まっている時ほど、極端な論が通り、ファッショを呼び込む道具になってしまう。そのような観 点から、注意しながら読まないといかんかなという、アラームも頭の中に鳴るんだなぁ。実際、読了後考えてみたが、おいら個人は、この本に100%同意して いる訳ではないよ。特に、現在の経済システムの複雑さと野蛮さを考えた時に、日本民族のアイデンティティの確立だけで、この国を生きながらえさせることは、かなり難しいと思う。その意味で、マインドセットに訴えかける言葉としては面白いが、政策の方向性とかで見てしまうと怖いものがある。
あと、天皇が祈る存在であるというのは、全く同感だ。これは、中沢新一の「アースダイバー」でも語られていた「森に住む天皇の意味」と、ほぼ同種の論である。
それから、伊勢神宮の「木材」をどのように利用しているかについての説明は興味深い。

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