2011年8月31日水曜日

書評: 神様のカルテ / 夏川草介

話題の小説だ。ベストセラー。アワード受賞作品。漫画の原作にもなり、今年は映画が公開される。
長野県松本市の中規模民間病院に勤務する内科医栗原一止が、その激務の中で、患者との心の触れあいを通して紡がれる優しさや愛情を見いだすことを描く作品。先端治療からも見放された末期患者に対して、真正面から向き合う医師としての一止を描き、医師の悩みと葛藤を示しながら、同時に末期患者のQOLとは何かを改めて考えさせる作品にも仕立てている。
しかし、読了後改めて振り返ってみると、この作品は医療現場を使ったスラップステック・コメディではないかと邪推している。徹夜が続く医療現場での、砂山と栗原の行動と会話は、まさにコメディである。さらには、激務終了後にフラフラの状態で帰り、彼が住む「御嶽荘」なる集合住宅での酒盛りも、これまた喜劇そのものだ。世の中には、本作品を感動大作とか、人間愛を見る感動の一冊とかいう紹介もあるが、おいらは本書がそういった言葉にぴったりという評価はできないな。本書は、著者が相当計算しまくって書かれたスラップスティック・コメディであると思う。ただ喜劇だけでは小説にならないので、それにヒューマンドラマも混ぜてみたのだと。そう考えれば、かなり腑に落ちるところが多い。これってコメディたっぷりなんだ!と。気楽に読んでOKって感じ。この本には、それが丁度良い。

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