2012年3月6日火曜日

書評:感染症と文明 -- 共生への道 / 山本太郎

本書は、感染症の流行が、実は我々人間の文明社会の在り方と大きく相関関係をもっていることを明らかにしようという挑戦的な解説書である。人間は、何千年、何万年にもわたって、様々な感染症と遭遇してきた。結核や天然痘のように有史以来様々な流行の記録がある感染症もあれば、エボラ出血熱やSARSの ように、ここ20年以内に人類史上初めての流行が発生するような新たな感染症もあるのだ。これらの流行は、感染症そのものの特性だけに決められるのではな く、その感染症が遭遇した社会がどのような環境であるかによって、感染症の原因菌の生存戦略が左右されることがあるのだ。つまり、流行は、文明が大きな要 因になっていることを明らかにしていく。しかし、その手法は、公衆衛生学、感染症対策に基づく緻密な議論展開であり、十分な信頼性を読者に与えている。さ らに、感染症対策が本当に何を狙っているのか、実態はどうだったのかという視点も併せ持ち、解説を多方面から加えている。
とはいえ、文明が流行を作るというアイディアは衝撃であり、その解説を読み進む内に、どんどんと引き込まれていく自分を発見するだろう。本書はかなりお薦めです。

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