2012年3月6日火曜日

書評:世界史をつくった海賊 / 竹田いさみ

16世紀の欧州は、二つのビッグパワーが存在していた。一つが南北米国大陸を支配していたスペイン、もう一つがアフリカからインド、東南アジアに進出していたポルトガルである。どちらもカトリック国であり、強力な覇権を確立していた。
二つのビッグパワーとは事なり、プロテスタントを国教として、ローマと対立していた16世紀の英国(イングランド)は、経済的にも大きな地位を占めてなく、欧州の二流国であった。英国は、エリザベス女王1 世の下で、奇策に走る。それは、海賊を組織化して、南米との間で銀を輸送していたスペイン舟、アフリカやアジアとの間でスパイス等を輸送していたポルトガ ル戦、さらに、アフリカからカリブ海に奴隷を送っていたポルトガル戦を襲撃して、それらを略奪し、国家の収入とする作戦である。この海賊経済を成り立たせ た背景には、海賊行為に英国王室が関与し、国家が組織的に海賊経済を成立させたことにある。さらに、海賊の長は国家の英雄であり、市長あるいは政府の要職 に就く重要人物として扱われた。サーの称号を得ている。「パイレーツオブカリビアン」で出てくる海賊が、英雄としての描かれ方をしているのも、こんなとこ ろに理由がある。英国は、この海賊経済を18世紀まで続けることにより、経済的な発展と、貿易大国への脱皮と、さらに豊富な資金の国内投資による産業革命 の達成を成し遂げる。その段階で、始めて海賊行為を取り締まり、海賊経済からの離脱を成し遂げるのだ。それまでの約270年間は、なんと国家の収入を見た ときに、海賊経済が大きな地位を占めていたのだ。
このような海賊経済の実態と、これによって英国が如何にして経済大国に脱皮していったかを、分かりやすく記述したのが本書である。これは読み 物として、かなり面白い。英国が、ジェントルマン(紳士)の国とか言われるが、その実態は、かなり生臭く、いかがわしい歴史によって成立してきたことが分 かる。英米に対するコンプレックスを払拭するに、役立つ一冊でもある。
それにしても、乱暴な国家経営をしてきたんやねぇ、英国は。

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